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オリンピック競泳日本代表チームを悩ますspeedo水着問題

 事の発端は、speedo(以下、スピード)社製の新作フラッグシップ水着である『レーザーレーサー』が今年に入ってから、それを着用した各選手が世界各地で35個もの競泳の世界新記録を作った所にあります。
 ※スピード社は、オーストラリアで誕生し、現在本社はイギリスにある水着メーカーです。

 そして、日本選手権兼北京オリンピック日本代表選考会が行われ、オリンピック競泳日本代表選手31人が決まりました。

 その直後に行われた、競泳日本代表チーム合宿で、試しに、世界新記録を連発しているスピード社の水着を選手が着用して泳いでみたら、「体がすごく水に浮いて、泳いでる感覚が全く違う(良い意味で)」という声が選手から挙がり、実際にコーチ達がタイムを計ってみると、従来の自己記録より速く泳いだ選手が何人かいたそうです。
 某競泳コーチのブログでは、どの種目のどの選手かは明らかにしていませんでしたが、50mで日本新記録を出した選手がいたり、自己ベストを出す選手や、けのびのスピードだけでも、0.7秒も違う選手もいたそうです。
 選手たちは、ピークを日本選手権に合わせていただけに、その直後での合宿での記録の伸びは異常なものであり、『さぁ、こりゃ大変だ!どうする?!』となった訳です。

 何が大変かと言えば、日本水泳連盟は、オフィシャルサプライヤーとして、ミズノ、アシックス、デサント(arena(アリーナ))の三社としか契約していなく、それは即ち競泳日本代表選手がスピード社の水着を着用できないからです。

 スピード社は1960年代から2006年6月までは、ミズノとパートナーシップ契約を結んでおり、ミズノにスピード社製の水着を製造販売するライセンスを与えており、日本でのスピード社の地位はそのままミズノのものであった為、日本水泳連盟のオフィシャルサプライヤーとしてスピードは入っていました。
 しかし、2006年にミズノが創立百周年という事で、スピード社とのパートナーシップ契約を解消し、独自に『ミズノスイム』を立ち上げました(スピード社がミズノから離れていったという側面もあるそうです)。

 その事で、日本水泳連盟のオフィシャルサプライヤーから、スピード社は消え、ミズノだけが居座る形になりました。

 その後、スピード社での日本での製造販売のライセンスは、日本のスポーツメーカーのゴールドウィンが引き継ぐ事になり、そのバックに三井物産が付く事になりました。

 しかし、日本水泳連盟はオフィシャルサプライヤーとして、ミズノ、アシックス、デサントと2016年位まで契約しているようで、それを理由に、ゴールドウィンとしてのスピード社が日本水泳連盟のオフィシャルサプライヤーに新規参入するのを拒否しました。

 現在スピード社が現在世界各地で世界新記録を連発している水着『レーザーレーサー』を発表するまでは、特に問題はありませんでした。

 国産の水着でまだ対抗出来ていたからです。

 その証拠に、2007年にミズノが主催した『世界競泳2007』でも、日本選手はメダルを多く獲得し(他の外国選手のレベルが低かったという側面もありますが・・・)、そして、2008年2月の日本短水路選手権では、中村礼子選手と中西悠子選手がアシックスの北京オリンピック用水着を着用して世界記録を打ち立てています。

 しかし、前述したように、2008年日本選手権直後の日本代表選手団合宿で、スピード社の水着を試しに着用してみたら、水着の質に物凄い差があるのを日本代表選手団は実感する訳です。
 最初は、驚いていたものの、その内に、『汚い』や『これは水着のドーピングだ』という声までが挙がるようになり、メディアでもその事が取り上げられるようになりました。
 しまいには、日本選手権兼北京オリンピック代表選考会で、スピード水着を着用して、代表入りした、松本尚人選手、岸田真幸選手が、あたかも悪者のように扱われたりする始末。
 勿論、彼等には全く罪はなく、着用したい水着を着用しただけです。

 競泳で1秒違えば、(種目にもよりますが)最下位だった選手が優勝できてしまう位、大きな差なのです。
 現場が危機感を募らせるのも無理はないでしょう。

 そして、現場のコーチから、(スピード社の水着を着用できない事から)現在、日本水泳連盟が契約しているミズノ、アシックス、デサントの三社に、北京オリンピック本番までに、現在の各社のフラッグシップ水着を(スピード社の水着に負けないように)改良して欲しいという声が挙がります。

 現在では、日本に限らず、世界各地でもスピード社の水着の問題は起こっていて、先日、北京オリンピック代表選考会があったフランスでは、当初、フランス水泳連盟がアリーナ社と契約している為、アリーナ社と契約している選手が、『スピード社の水着を着用して泳がせてくれ』と涙ながら直訴し、フランスアリーナ社側が折れて、選考会中盤から、アリーナ社と契約している選手もスピードの水着が着用できるようになりました。

 これから、北京オリンピック代表選考会のあるイタリアも事情は同じです。イタリア水泳連盟もアリーナ社と契約しており、イタリアでは、アリーナ社の欧州本部がイタリアにあるだけに、アリーナ社との結びつきは強いらしく、北京オリンピック代表選考会ですらスピード社の水着の着用を認めない方針であるという噂も聞こえてきます。

 そもそも、最初に『スピード水着はおかしいんじゃないか?』という提言をしたのは、スピード社のライバル、アリーナ社でした。

 現在、オリンピック男子100自由形で2連覇している、オランダのピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド選手などは、自身と契約しているメーカーに違約金を払ってまで、スピード社の水着を着用しているそうです。

 さて、話を日本に戻しましょう。

 日本陸上連盟は、国会議員の河野一族が牛耳っているのは有名ですが、日本水泳連盟は誰が実権を握っているのかは不透明です。

 ただ、現在日本水泳連盟のオフィシャルサプライヤーである、ミズノ、アシックス、デサントの国産三社の中でも一番規模が大きく、政治力もあるのはミズノでしょう。
 他メーカーの新規参入を認めないのに、音頭を取っているのはミズノである可能性が高いと考えられます。

 実際、ミズノが主催した、2007年の『世界競泳2007』では、日本代表選手全員に、立ち上げたばかりの、ミズノ純製の水着を着用させようとしたようですが、さすがに、選手から不満の声が挙がり、それは叶わなかったものの、日本代表選手の中で、ミズノの水着以外を着用する選手の水着は黒ベースの地味なデザインとなり、メーカーのロゴを入れるのも許されませんでした。
 この『世界競泳2007』には、当初、現在の水泳界の怪物マイケル・フェルプス選手が出場する予定で(実際には出場せず)、ポスターには、客寄せパンダよろしく、マイケル・フェルプス選手の姿が大きく刷り込まれましたが、そのポスターに写る彼には、彼が契約するスピード社のロゴは消されていました。
 これらの事からもミズノの政治力の強さが分かります。

 ここまで来ると、談合と同じ構造に見えてきます。
 つまり、ミズノの背後に、大物国会議員、若しくは有力者が控えており、政治力を発揮し、アシックス、デサントは、そのミズノに歩調を合わせて、日本水泳連盟でのオフィシャルサプライヤーの地位を確保、独占しているという構造です。
 実際、その締め出しは厳しく、以前、アディダス社が日本水泳連盟にオフィシャルサプライヤーに新規参入を打診しましたが、拒否されました。

 それから、ミズノは怒涛の営業力が有名です。
 これは、つまり、ガンガン押し付けてくるという事に他なりません。
 実際、2007年にミズノがスピード社とパートナーシップ契約を解消して、独自に『ミズノスイム』を立ち上げてからのミズノの、選手やチームへの囲い込みは凄まじいものがありました。
 有力選手を囲い込んで、『ミズノスイムチーム』なるものを作り、それまで、アシックスやデサントが手懸けていた選手やチームはことごとくミズノに鞍替えするようになりました。
 この現象は一種異様に私の目には映りました。

 ただ、ミズノの水着の質は実際には良く、今回北京オリンピック用水着として発表された『ウォーター・ジーン』(所謂、「カジキ水着」)は、カジキの皮膚を参考にして、水着が水に触れるとジェル状になり、それで、水の抵抗を減らし、ただ締め付けて体の体積を減らすのでなく、複雑なカッティングで水着を着用者にフィットさす、というもので、この水着が発表された当初は、私も『流石、ミズノ!』と感嘆したものです。
 なので、前述した、選手やチームのミズノへの鞍替えも、ただ単なる政治力と営業力によるゴリ押しだけではないのかもしれません。

 ただ、スピード社の水着『レーザーレーサー』が、それら国産の水着の遥か上をいってしまったのは事実です。
 技術で日本が負けるのは、日本人である私としても悔しい所ですが、事実なので仕方ありません。

 昨日(5月7日)、日本水泳連盟で理事会が開かれて、スピード社を緊急に新規参入させて、日本代表選手もスピード社の水着を着用できるようにするかについて議論が行われていましたが、結局結論は、『5月30日までにミズノ、アシックス、デサントに、現在の北京オリンピック用水着を改良するように』というお達しが下ったに過ぎませんでした。
 この事態をハラハラ見ている私としては、肩透かしを喰った感が否めませんでした。
 というのも、日本水泳連盟と、ミズノ、アシックス、デサントの国産三社との契約の中には『他の参入メーカーを認めない』という項目はなく、国産三社の合意があれば、違約金等支払わなくても、スピード社を新規参入させて、競泳日本代表選手がスピード社の水着を着用できる事が判明し、事態も、もうすぐにスピード社が、日本水泳連盟のオフィシャルサプライヤーに新規参入できるのでは?という憶測が飛び交っていたからです。

 そして、今回の理事会(5月7日)で、スピード社がオフィシャルサプライヤーとして緊急に新規参入でき、日本代表選手もスピード社の水着『レーザーレーサー』を着用できる、取り決めが行われるのではないか、と私も見ていたからです。

 報道ステーションでも、昨日、一昨日と、この水着問題について報道され(少しの時間でしたが・・・)、昨日の放送では、北島康介選手のコーチである平井コーチが出演、コメントしていて、矢張り、今回の理事会での決定には肩透かしを喰ったという内容のコメントをしていました。
 もう、本番の北京オリンピックまで100日を切っているのです。
 悠長にしている暇などありません。

 このままいくと、日本水泳連盟も結局は、『金』メダルより『金』が大事だったという事になります。

 当初、スピード社も、水着に付けるロゴをミズノやアシックスやデサント(arena)にしてもいいから、スピード社の水着『レーザーレーサー』を着用して下さい、と大幅に譲歩していたのですが、日本サイドが頑なに国産メーカーにこだわる余り、遂にはヘソを曲げて、矢張り、『speedo』のロゴを入れた上での着用にこだわって迫ってきたそうです。
 スピード社の気持ちも分かります。

 このような流れの中で、北京オリンピック競泳本番では、殆どの選手が、スピード社の水着を着用する事が考えられます。
 世界水泳界の二大強国の内の一つである、オーストラリア等はチームがスピード社と契約しているので、オーストラリア代表選手は全員スピード社の水着を着用します。これは脅威です。
 そして、世界水泳界の最強国アメリカでも、スピード社と契約する選手は多数います。
 それに、競泳アメリカ代表の選手の内から自らが契約しているメーカーのロゴを入れたスピード社の水着を着用する選手も多数出てくるものと思われます。
 そうなると、現場のコーチ達が声高に叫ぶように、『泳ぐ前から、日本代表選手が精神的に後手に回ってしまう恐れ』があります。
 北島康介選手のライバル、ブレンダン・ハンセン選手は、現在はナイキ社と契約していますが、北京オリンピック本番でハンセン選手がナイキのロゴマークの入ったスピード社の水着を着用して、北島康介選手がハンセン選手どころか、他のスピード社着用選手にすら負ける事は容易に想像できます。

 前述したように、競泳で1秒違えば(種目によりますが)最下位の選手が優勝できてしまう位大きな差なのです。
 それが、今回のspeedo水着問題の深刻さを表していますし、水着における世界と日本の技術差も大きく開いてしまった事も表していて、それは日本の技術力にとっては深刻な問題でもあります。

 もし、このまま、競泳日本代表選手がスピード社の水着を着用できないまま、北京オリンピック本番を迎えて、メダルが一つも取れなかったから、日本水泳連盟及び、オフィシャルサプライヤーであるミズノ、アシックス、デサントは、これまで書いてきた経緯を知っている世論に徹底的に叩かれるでしょう。
 更に、ミズノは同族会社である事(同族会社が不健全な事は、船場吉兆の一連の不祥事や有名なささやき女将を見るまでもないでしょう)、その営業手腕、スポーツメーカー界での政治力についてのそれら構造も厳しく批判されるのは想像に難くはありません。
 そのミズノに歩調を合わせたアシックス、デサントも同罪でしょう。

 スピード社の水着『レーザーレーサー』は、縫い目がありません。生地と生地を特殊な超音波で溶接しているのだそうです。
 その特殊な工法ゆえ、一日の生産量は70着が限界だそうです。
 現在、スピード社の製品を製造販売するライセンスを与えられているゴールドウィンサイドは、『現在「レーザーレーサー」は世界各地のトップスイマーからの注文が殺到しており、日本水泳連盟も早く新規参入を認めてもらわないと、決定が遅くなれば、生産量が少ない故に、新規参入できたとしても、「レーザーレーサー」を提供できなくなるかもしれない』と述べていて、オフィシャルサプライヤーへの新規参入への千載一遇のチャンスとばかりに、日本水泳連盟にプレッシャーを掛けて来ています。

 今回の北京オリンピック競泳は、アメリカのテレビ局のゴリ押しによって、決勝・準決勝が午前に開催される事にはじまり、今回の水着問題と、トラブルが多いです。

 水着問題については、今後、どうなっていくか、ハラハラしながら見守っていくしかありません。
 どうか、この問題で、競泳日本代表選手が北京オリンピック本番までのトレーニングの段階で、精神的に後手に回ってしまって、トレーニングそのものがおぼつかなくなるような事がないように願いたいです。
 競泳日本代表選手は、北京オリンピック本番まで、このような水着問題に気持ちが捉われる事なく、出来る事を精一杯やって、本番を迎えて欲しいと思います。

 選手は頑張れ!水泳連盟は早く動け!ですね・・・。

 スピード社ホームページ:http://www.speedo.jp/
 ミズノスイム・ホームページ:http://www.mizuno.co.jp/mizuno_swim/
 アシックス・ホームページ:http://www.asics.co.jp/products/swimming/index_A0.html
 デサント(arena)ホームページ:http://arena-jp.com/

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